牧水が大正末期頃に揮毫した掛け軸が見つかり、第64回牧水祭で公式発表された。
書かれている歌は、
「ひとの子をおほしそだつる如くにし村をおさめゆくゆゝしかりけり」
で、15冊の歌集や牧水全集等にも収録されていない、未発表の歌である。牧水は旅先で即詠、揮毫することが多く、そのため歌集や雑誌等で発表されない作品が生まれる。
歌の意味は、「子供を伸ばし育てるように村を治めていく、何と尊く立派なことだろう」。
牧水は大正13年に父の13回忌法要で帰郷しており、その際村人から盛大なる歓待を受けた。そのお礼として村を治める長または長老などに対して、その場で揮毫したのではと推測される。また「ゆゝし」という言葉は神聖さを意味することから、氏神に対しての歌である可能性もある。いずれにしても故郷そしてそこに生きる「ふるさと人」へ対する牧水の深い愛情が表れた歌である。
この掛け軸は日向市が古書店より購入、若山牧水記念文学館に収蔵され、9月18日より一般公開される。
(なお作品保護のため、公開は3ヶ月ほどを予定)